『戦場のピアニスト』(2002)で知られるエイドリアン・ブロディ主演の映画『ブルータリスト』が日本で2月21日から全国公開される。本作は、第二次世界大戦下にホロコーストを生き延びアメリカへと渡った、ハンガリー系ユダヤ人建築家ラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)の30年にわたる数奇な半生を描き出した、215分にわたる壮大な人間ドラマ。本作の監督・脚本を務めたのは弱冠36歳の気鋭ブラディ・コーベット。 第81回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した本作は、1⽉17⽇に発表される第97回アカデミー賞の最有力候補。その前哨戦となる第82回ゴールデングローブ賞が1月5日に発表され、作品賞(ドラマ部門)、監督賞、主演男優賞(ドラマ部門)の合計3部門を受賞した。 本作のストーリーは建築やアートファン注目の内容だ。才能にあふれるハンガリー系ユダヤ人建築家のラースロー・トートは、第二次世界大戦下のホロコーストから生き延びたものの、妻エルジェーベト(フェリシティ・ジョーンズ)、姪ジョーフィア(ラフィー・キャシディ)と強制的に引き離されてしまう。家族と新しい生活を始めるためにアメリカ・ペンシルベニアへと移住したラースローは、そこで裕福で著名な実業家ハリソン(ガイ・ピアース)と出会う。建築家ラースロー・トートのハンガリーでの輝かしい実績を知ったハリソンは、ラースローの才能を認め、彼の家族の早期アメリカ移住と引き換えに、あらゆる設備を備えた礼拝堂の設計と建築をラースローへ依頼した。しかし、母国とは文化もルールも異なるアメリカでの設計作業には多くの障害が立ちはだかる。ラースローが希望を抱いたアメリカンドリームとはうらはらに、彼を待ち受けたのは大きな困難と代償だったのだ。
タイトルの元となる「ブルータリズム」とは、1950~70年代にかけて世界中で流行した建築様式。打放しコンクリートやガラス等の素材をそのまま使った、粗野な印象の建築群を指す。「ブルータル」とは「獣のような、荒々しい」という意味。イギリスの建築家アリソン&ピーター・スミッソン夫妻がこの言葉をコンクリートでできた灰色の建築物に対して用いたことから定着したとされる。日本では黒川紀章の中銀カプセルタワービルや、丹下健三の倉敷市立美術館(旧倉敷市庁舎)などがブルータリズムに位置付けられる。 第二次世界大戦後、無残にもすべてを奪われた建築家が希望を抱いたアメリカンドリーム。見知らぬ土地と異なる文化、その光と影に苛まれながら、家族への愛と建築への情熱をたぎらせ続けた 30 年。その半生に繰り広げられる人間ドラマに期待したい。
Art Beat News
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