女優の吉岡里帆が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、5日に放送される『クズ芸人の生きる道』。パチスロとギャラ飲みで生計を立てるお笑い芸人・小堀敏夫(ガッポリ建設)が一念発起して挑む婚活を追っていく…はずだったが、密着取材は思わぬ方向に展開していく。
あまりの怒涛の展開に「どんどん置いていかれてしまいました(笑)」と困惑しながらも、“むき出し”で行動する小堀の姿に「よし、私も頑張ろう」と、多忙の中で元気をもらう収録になったようだ――。
- 『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した吉岡里帆
「結婚がしたい」と番組スタッフに連絡
『ザ・ノンフィクション』で前回、小堀に密着したのは、2020年4月19日に放送された『52歳でクビになりました。~クズ芸人の生きる道~』。トレードマークはジャイアンツの帽子、家賃3万2,000円の安アパートに暮らしながら“ギャラ飲み”と借金で、その日暮らしの日々。芸を磨く努力は皆無で、ネタ見せをサボり、パチスロに興じる小堀を、ワハハ本舗主宰の喰始は「クズ芸人」と呼んだ。
それから5年、57歳になった小堀は相変わらず“ギャラ飲み”で生計を立てていた。お笑い芸人としての活動は、月に1回のお笑いライブだけ。父親を亡くし、母親も寝たきり状態、還暦が近づく中で老後が不安になり「結婚がしたい」と思い始め、番組スタッフに連絡してきた。
「お金持ちの女性と結婚して養ってもらいたい」という小堀は結婚相談所に入会を決め、婚活をスタート。婚活アドバイザーの手ほどきで身なりを整え、張り切ってお見合いの場に臨むものの、会話はどこまで本当かも分からない小堀の話ばかり。「ガッポリ建設」の名を出せば、自身が“クズ芸人”であることがバレてしまう。結果、お見合いした女性たちからは「お断り」されることが続き、結婚相談所の会費も支払えなくなり、次第に人生の窮地に追い込まれていく…。
- 婚活に勤しむ“クズ芸人”小堀敏夫 (C)フジテレビ
根っこにある自己肯定感の高さ
5年前の小堀のドキュメンタリーでもナレーションを務めた吉岡。いつものナレーションでは、「登場人物に思いを馳せて、その人の心情に寄り添って、どういうふうに声を入れたらこの人がよりキラキラ輝くんだろうと考えながらやっています」というが、前回の収録は、「“どうしてそんなふうになってしまうの?”とハテナが多かったんです」と衝撃を振り返る。
そして、「2回目の今回は、前回よりもっと驚かされました。小堀さんが婚活を頑張って前向きになる話だと思いきや、どんどん置いていかれてしまいました(笑)」と、後半の怒涛の展開に再び衝撃を食らった。
前回のナレーション収録後、小堀に対して「“自分を許す力”の強さを感じました」と語っていた吉岡。それは今回も同様だったそうで、「純粋な子どものような無邪気さがありますよね。多くの場合、大人になると“自分がもっとこうしないと周りに失礼だな”と思って行動に制限がかかりますが、小堀さんがとる行動の根っこには自己肯定感の高さを感じました」という。
一方で、何もかもうまくいかず、自信をなくしたような場面もあったが、「まるで最近初めてこの世界にやって来て、1個1個の出来事が不思議で仕方がないと、日々発見をしていってる姿を見たような気がしました。我々が“そりゃそうでしょう”とツッコみたくなるところで、ハッとした表情をしたりするので(笑)」と、やはり子どもの無邪気さを感じたそうだ。
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今回は、小堀にお金を貸してくれる一番弟子の芸人・魔法使い太郎ちゃんや、ガッポリ建設の相方・室田稔さん、さらには小堀の婚活に本気でダメ出しする結婚相談所主宰の山本さん、アルバイトを受け入れてくれる店主など、“クズ芸人”を見捨てず、親身になってくれる人々が登場。吉岡は「皆さんへの好感が高まりました」と印象を語る。
「突然、人に“お金貸してほしい”と言われたら普通は怖いし、あんまり関わりたくないと思ってしまいそうですが…」と想像するが、それでも皆が手を差し伸べるのは、小堀に他人を引き寄せる魅力があるからなのだろうか。
「そこはまだ謎のままなんですけど、人間味があふれていて圧倒されちゃうんです。みんな自分のダメなところは極力出したくないし、恥ずかしいと感じると思うのですが、小堀さんはいつも軽いウソをつきながらも、本当に“むき出し”なんですよね。だから、傍から見て“おかしいよ”と思うことがどうしても生じちゃう。そこが、芸人さんたる所以なんだなと思いました。相方の室田さんが、小堀さんが“芸人を辞めない”と言った時にすごくうれしそうな顔をしていたのが印象的で、“芸人・小堀敏夫”に惚れているんだなと感じました」
そんな小堀と室田さんのやり取りで、吉岡が思わず収録中に吹き出してしまう爆笑シーンが訪れた。
「もう面白すぎて、ナレーションの時にあんなに笑ったのは初めてです(笑)。室田さんが本気で怒って、それを受ける小堀さんの鬼気迫る表情…。あまりにも自分の道を行き過ぎる小堀さんと、正しいことを言ってる室田さんが、どう見てもボケとツッコミで、その緩急がさすがコンビだなと感じた瞬間でした。これは良質なコントになりそうだと思ったので、絶対にお客さんに見せるべきだと思います。本気で『キングオブコント』にチャレンジしてほしいです」
- (C)フジテレビ
実はすごく大切なことを言っているのかもしれない
芸人でありながらネタを作らず、婚活も本気なのかどうか…。何をやってもうまくいかない小堀だが、借金をするにあたって誠意を見せるために魔法使い太郎ちゃんが店長を務める焼肉店でアルバイトをする姿に、吉岡は適性を感じた様子。
「焼肉を食べに来ている人のテンションにフィット感があって、接客がとても上手だったんです。太郎ちゃんも“助かりました”と言ってましたし、ここでずっとアルバイトをしたらいいのではないかと思いました」と望んだが、即座に「でもまたサボっちゃうのかな(笑)」と、一筋縄ではいかない人物であることを思い出していた。
今回の放送は、多くの人が仕事始めの前日にあたる。それだけに、「ちょっと気持ちが沈んでしまう人がいたら、小堀さんの姿を見ていただいて、“自分は頑張りすぎてるんだな”と気づいてほしいです。小堀さんが“ネタを頑張って作って体調崩すくらいなら、寝たほうがいいでしょ”ってよく言ってるんですけど、実はすごく大切なことなのかもしれない」と考察する吉岡。
「私自身、年末は仕事が忙しくて体もくたびれていたのですが、気づいたら“よし、私も頑張ろう”ってちょっと元気をもらっていました」と、身を持ってその効果を実感したようだ。
●吉岡里帆
1993年生まれ、京都府出身。連続テレビ小説『あさが来た』、ドラマ『カルテット』などに出演し、注目を集める。主な近作にドラマ『しずかちゃんとパパ』『ガンニバル』『時をかけるな、恋人たち』『忍びの家 House of Ninjas』、映画『パラレルワールド・ラブストーリー』『見えない目撃者』『ハケンアニメ!』など。現在公開中の映画『正体』で第45回報知映画賞女優助演賞を受賞した。25年は映画『ファーストキス 1ST KISS』『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』『九龍ジェネリックロマンス』、舞台『令和6年能登半島地震復興祈念公演「まつとおね」』が控えており、26年には大河ドラマ『豊臣兄弟!』に出演する。