【桐蔭学園-国学院栃木】後半、相手のタックルを受けながら攻め込む国学院栃木の神尾樹凜=東大阪市花園ラグビー場で2025年1月5日、長澤凜太郎撮影
司令塔が体を張ったプレーでチームに活力を与えた。1点を追う前半終了間際、相手陣ゴール前。国学院栃木のスタンドオフ(SO)神尾樹凜(きりん)は懸命に体を投げ出し、陣地挽回を狙った相手のキックをチャージした。
【桐蔭学園-国学院栃木】前半、国学院栃木の神尾樹凜がゴールキックを決める=東大阪市花園ラグビー場で2025年1月5日、中川祐一撮影
ここで終わらない。さらにインゴール内でこぼれ球を捕球した選手に強烈なタックルを浴びせた。神尾は「全員が体を張らないと国栃は勝てない」と言う。マイボールの5メートルスクラムの好機をもたらすとフランカー下境洋の逆転トライへ導き、6点リードで折り返した。
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関東を引っ張るライバル校対決。神尾は「盾と矛の勝負」と踏んでいた。「桐蔭はアタックが脅威で自分たちはディフェンスが武器。相手にボールを渡してもいいから、そこから流れを作っていく」
フィジカル勝負では分が悪い。的確なハイパントやロングキックでFW陣を前に出した。陣地をうまく取りながら味方の消耗を防ぎ、ロースコアの接戦に持ち込んで最後は守り勝つ。描いていた勝ちパターンに近い展開にはなったが、後半の終盤で桐蔭学園に力で防御をこじ開けられた。紙一重で消えた決勝の舞台を神尾は「細かいところへのこだわりが少しだけ、相手より足りなかった」と受け止めた。
【東海大大阪仰星-常翔学園】前半、ゴール前のラックからボールをつなぎ常翔学園の藤間悠太が抜け出してトライ=東大阪市花園ラグビー場で2025年1月5日、中川祐一撮影
今大会は準々決勝の石見智翠館(島根)戦で完封するなどチームは抜群の組織的な防御が際立った。目立ったスター選手がいるわけでもない。密集への素早い集散と個々のタックル精度が高く、規律を保ち続けた。伝統のディフェンス力が原動力となったが、それを引き出した神尾の存在感も絶大だった。吉岡肇監督は「キックもレシーブもミスがない。神尾はハードタックルをするわけでないが、みんなを慌てさせずにプレーさせてくれた」とたたえた。
田村優(横浜キヤノンイーグルス)、伊藤耕太郎(リコーブラックラムズ東京)らゲームメーカーを生んできた国学院栃木。偉大な先輩たちを超える初の日本一には届かなかったが、神尾は「やりきったぞという感じ。笑顔で終わりたい」と涙なく花園を去った。【長宗拓弥】