頻繁に飛行機が発着する福岡空港では、年間40件前後のバードストライクが発生する=福岡市博多区で2023年11月8日午後4時2分、徳野仁子撮影
韓国南西部の務安(ムアン)国際空港で29日午前に発生した旅客機事故は、エンジンが鳥を吸い込むなどの「バードストライク」が原因で発生した可能性が指摘されている。バードストライクはなぜ起き、どのような対策が取られているのか。
航空機のジェットエンジンは猛烈な勢いで空気を吸い込むため、近くを飛ぶ鳥が巻き込まれる。鳥が大型であるほど衝撃は大きく、エンジン内が損傷し、最悪の場合は停止する。
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国土交通省によると、日本国内の空港では年間1000件超のバードストライクが発生している。新型コロナウイルス禍の減便の影響で2020年は972件に減ったが、21年に増加に転じ、22年は1421件、23年は1499件とコロナ前の水準に戻った。このうち、23年は航空機の機体が損傷するケースが59件確認されている。
海外では、1960年10月、米ボストン・ローガン国際空港を離陸したイースタン航空375便がヨーロッパムクドリの群れに衝突してエンジンが損傷し、機体は墜落して62人が死亡する事故が発生した。09年にもバードストライクが原因で米ニューヨーク市のハドソン川に大型旅客機が不時着水する事故があった。
バードストライクの発生件数が多い空港では専従の職員がパトロールし、空砲を撃ったりスピーカーで音を発生させたりしているほか、鳥のエサとなるバッタを駆除している場合もある。各航空機メーカーも、エンジンの強度を上げるなどの対策を取っている。
それでも、航空機の離着陸は鳥にとって高速で、迫ってくる航空機を前に飛び立とうとするが、間に合わずに衝突してしまうケースが後を絶たない。さらに、鳥の種類が多様なので、対策も容易ではない。
国交省では専門家や航空関係機関を集めた「鳥衝突防止対策検討会」を年1回開き、発生状況の共有や対策の検討を続けている。【椋田佳代、菅野蘭】