政府は17日、犯罪対策閣僚会議で決定した緊急対策に、警察の捜査員が身分を偽って闇バイトに応募する「仮装身分捜査」の早期の実施を明記した(時事通信フォト)
警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、闇バイト対策として警察が打ち出した「仮装身分捜査」について。
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12月12日、警察庁の露木康浩長官が記者会見で、「雇われたふり作戦」と名付けた作戦を発表した。相次いて起こる闇バイトによる犯罪を防ぐため、捜査員がSNSなどを通じて闇バイトに応募、身分を隠し、偽の人物の身分証明書を使って架空の人物に成りすまして犯行グループに接触するという「仮装身分捜査」を取り入れた新たな捜査手法だ。
露木長官は「犯罪の取締りや抑止を図るうえで効果的だ」と述べ、警察がこの作戦を行うことで、犯罪グループが実行犯を集めにくくなる抑止効果が見込まれるが、識者からは「根本的な解決にはつながらない」という声を上がっている。そこで”トクリュウ”(匿名・流動型犯罪グループ)の手口についてよく知るという指定暴力団の現役幹部に、仮装身分捜査について、実際のところどう思うか聞いてみた。その答えは…。
「効果はある」と即答。「指示役にまでたどりつくのは無理でも、その場で事件を未然に防ぐことができるのが重要」という。
幹部は「事件を未然に防げれば被害が出ないだけではない。闇バイトに応募して集められた実行犯を、事件を起こす前に逮捕できるというのが大きい。人によっては、ホワイト案件かと思って安易に応募したヤツもいるかもしれない。闇バイトとわかっていても、応募したことを後悔しているヤツもいるだろう。身分証明の画像を言われるがまま送ったことによって住所や家族関係がわかってしまい、バラすぞとか、家族に危害を加えるぞと脅されているかもしれない。彼らが強盗犯になってしまうのか、未遂犯になるのか、それとも犯罪行為に手を染めることなく終われるのか、その後の人生が変わる」と話す。自分にも前科があり、前科者ばかりの中で生きてきた幹部の言葉は重い。
おとり捜査は無理でも、仮装身分捜査ならそれが可能になるのだろう。その違いについて、自民党の前経済安全保障相の高市早苗氏は自身のXで「おとり捜査とは、その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するよう働き掛け、相手方がこれに応じて犯行の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するもの」で、仮装身分捜査は「必ずしも犯罪実行の働きかけを伴わない仮装身分活動」だと述べている。違法薬物や銃器の取引など、通常の捜査手法だけでは摘発が難しい場合に実施されてきたおとり捜査は、相手が実行に踏み切ったところで逮捕する。しかし仮装身分捜査は、警察官が犯罪の実行に加担しないだけでなく、被害や被害者が出る前に事件を防ぐことができるらしい。